コイ

なぜ、コイ釣りは人気がないのでしょうか?私が住んでいる地域では、川や池でコイを釣る人の姿を見かけることは、まず、ありません。ブラックバスを狙っている人は、ちらほらいます。ナマズを狙っている人も、たまに見かけます

一方、休日の海へ出かけてみると、堤防や波打ち際には数メートル間隔で釣り人が立ち並び、満員状態です。こうした状況を見ると、現在、コイ釣りは人気がないと考えざるをえません。

昔は人気だったコイ釣り

昔から、コイ釣りは不人気だったのでしょうか。そんなことは無いはずです。東京・隅田川の『百本杭』は、鯉釣りの名所として江戸時代から有名でした。浮世絵にも、同ポイントでのコイ釣りを題材としたものが何枚もあります。

一景『東京名所四十八景 』『大川はた百本杭』
一景『東京名所四十八景 』『大川はた百本杭』

コイ釣りの人気が衰えた理由

コイ釣りの人気が衰えてしまった理由を考えてみたいと思います。ひとつには、せわしない生活を送る現代日本人の嗜好に、ポイントに餌を投入した後じっとアタリを待つ釣り方が合わなくなった。という理由があると思います。

それと、もうひとつ。私が本命だ考えている理由があります。それは、戦後の日本でコイのペット化が進んだことです。

錦鯉

戦後、コイをペットとして飼う文化が普及

江戸時代の後期に新潟で誕生し、明治時代に改良が進んだニシキゴイは、大正3年の東京博覧会で裕仁親王(後の昭和天皇)の目に止まり、全国的な知名度を得ます。

しかし、まだ貧しかった戦前の日本では、庶民がおいそれと手を出せるものではありませんでした。ニシキゴイが日本中に広く普及したのは、戦後の1960年代のことです。高度経済成長による所得増と、ビニール袋の登場で輸送が格段に楽になったことで、ついに日本にニシキゴイ・ブームが到来したのです。

その結果、コイは身近にありふれた魚となりました。それまで、食用魚と認識されてきたコイが、犬や猫のようなペットになったのです。これが、コイ釣りの人気凋落の大きな原因ではないかと私は考えます。

ペットを釣っても面白くない?

野生化したノイヌ、ノネコは狩猟鳥獣として認定されていますが、狙って撃つハンターは、まずいません。日本の野山に野生化したウシやウマが歩いていたとしても、やはり撃つ人はいないでしょう(アメリカ人は野生化したブタを好んで撃ちますが)。

それと同じく、ペットでありコンパニオン・フィッシュとなったコイを釣ろうと考える人が少なくなったのではないでしょうか。

野生のコイはオラオラ系

もちろん、野生の・または野生化したコイは大人しいペットなどではありません。コイを釣る人なら知っているでしょう。彼らは、身近な川の暴走特急です。ブラックバスなど物ともしない、超オラオラ系のお魚です。コイが小魚を襲ってパクッと食べるところを、私は見たことがあります。

しかし、『コイはペット』だと思って育ち、人間の顔を見ると近寄ってきて、手から餌を食べるイメージしかない人が増えれば、コイ釣り人気が衰えるのも当然なのかもしれません。

欧米でも同じ結果になるか?

現在、欧米ではニシキゴイ飼育の人気が高まり、"koi" という日本語が通じるまでになっています(ただし、食用のヤマトゴイやドイツゴイなどは除き、ニシキゴイだけを指すようです)。それと同時に、ヨーロッパ発の洋風スタイルのコイ釣りも人気です。趣味が高じてマルキューの練りエサを輸入するような釣り人もいるようです。

つまり、ペットとしてのコイと、釣り対象魚としてのコイが同時に人気を博す状態となっているわけです。この状況は、そのまま続くのでしょうか。それとも、いずれ日本のような状態になるのでしょうか。

英語圏では、釣りをする時は"carp"、ペットとして飼う時は"koi" と呼んで別物扱いのようなので、当分は現状維持なのかな。という気がします。